前回までの話。
マッチングアプリで193cm超高身長イケメンの新幹線の運転手(以下、新幹線)と知り合い2人で飲みに行くことに。 前夜に私の性欲が暴走しテレフォン•マグワイヤーしてしまったので、恋愛路線は諦めてたけど、せめてヤりたい。 バーでお酒を飲みながら意図的に終電を逃し、私の家へ向かう。 (詳しくはこちら→1話、2話)
TSUTAYAで「ホラー怖いからイヤ」「大丈夫、怖くないって〜」と、今夜も日本中の曖昧な男女80組くらいが使ってそうなベタなやり取りをしながらDVDを借り、手を繋いで家に向かった。
このシチュエーション前戯(意味:まぐわいほぼ確定の状態で、会話などにより直接的な性的刺激を施さずとも気持ちを高めていくこと)を堪能しながら
「これは絶対にヤレる流れや!ありがとうマッチングアプリ!!!」と、脳内でショーシャンクの空に、くらい両手広げて天を仰いだ。
当時住んでいた家は、あの頃の私からするとちょっと奮発したお値段(家賃)だった。
15畳のリビングにカウンターキッチン。
8万円くらいで購入したストライプ柄のソファに、ダブルベットには麻のシーツをかけて、枕元にはいつも明るい花を生けていた。
仕事で磨耗する日々の中、せめて一瞬でも「私だって丁寧に生きている!」と思いたくて花は毎週変えた。
当時の精一杯を詰め込んだ、我が城だ。
そんな家に引っ越してから、初めて男性を家に招き入れたのだ。
「ここが家だよ。」
「おー広いやん!いい部屋やなー。これから仕事終わりこれからここ泊まるわ笑」
・・・うん、大丈夫。
このままカップルになったら…のまぶい未来が見えた気がしたけど、幻だってわかってますので。
今回は「経験」させていただく立場。わきまえております。
「料理とかするん?」
「うん、するよー」
「じゃぁ次はカレー作って♪俺カレー好きやねん!」
私はあなたが好きy・・・危ない危ない!!!
一瞬、新婚生活ってこんなかな?って幻覚に引きずられそうになったけど。
でも大丈夫。期待しすぎて後から辛くなるなんてアホなことしない。
これは、ただのシチュエーション前戯の一環で、言葉に意味なんてないのだ。
―――――
3 人掛けソファに膝が当たるくらいの距離で座り、彼はビール、私はカルピスサワーで乾杯。
電気を消して、ホラー映画が始まった。
「えー無理、もう怖い・・・」
「そんな怖いん?可愛いー」
「可愛くないしっ」
文字に起こすとホラー映画も真っ青の激サブなこの会話も大正解。
なぜならシチュエーション前戯におけるトークは寒ければ寒いほうが下半身が燃えるのだ!!!!
ほんまは部屋を暗くした瞬間からガバッとチューしたかったけど、(※筆者は女)
シチュエーション前戯は長いほうがいい。
ホラー映画で『この家、何かヘンだ…』と不穏な空気が流れはじめた映画開始15分。
新幹線が体勢を変え、腕をソファの背もたれに置いた。私は新幹線の長い腕の中にすっぽり収まった。
シチュ前!シチュ前!!!
肩、腕、ふともも…身体の接してる部分が熱をもつ。
その3点に全神経が集中して、ホラーとかマジでどうでもいい。
シチュエーション前戯も佳境だ。
目と目が合う。
「顔、赤なってるで」
新幹線の手が頬に触れる。
ゆっくりとジェットコースターが最高到達地点へ向かう、あのドキドキ感。
「もー、なんもせんって言ったやん」
もう少し高みへ…あえてここは一旦拒否する。
「せえへんよ。それ美味しい?」
「うん、飲む?」
新幹線は、空いた方の手で私から缶を取り上げて、ひと口飲む。
「甘すぎ」
私の目を見てそう言うと、顔を近づけて
キス。
キッス!!!!
最高到達地点まで達してた私たちは、あとはもうただジェットコースターに身を任せ快楽に落ちていくだけ。
なんと素晴らしい夜か。
ーー
朝9時過ぎ。目が覚める。
枕元に飾ってる花がいつもより色鮮やかに見える。
隣では新幹線がぐっすり寝ている。裸で。
夢だけど、夢じゃなかった!
こんなイケメンとジェットコースターしたの、夢じゃなかった!
…さてと。
しかし現実を見なければ。
夢じゃないけど夢なのだよこれは。
まず1番に考えたのは「別れ際、いかにサッパリとお別れするか」。
付き合う前にジェットコースターした男女が、
女→したんだから付き合えるよね?言質とってちゃんと彼女にならないと! 男→やれて満足!でも今すぐ付き合うとかナイからとりあえず曖昧にしてキープ。ってか腹減った
このようにすれ違い、別れ際に気まずくなるケースは多い。
だが、私は違う!わきまえている!
経験させていただいただけでも大満足ですし、付き合うどうのこうの〜みたいなのも求めません。
試合終わりの高校球児のように深々と頭を下げたいくらい。あざっっした!!
確か13時過ぎには予定があるとか言ってたから、
もう少ししてから起こしてサッパリ見送るか…。
「おはよ」
新幹線がうっすら目を覚ます。
「おいで」と私を抱き寄せ、
ジェットコースター2周目突入!!!
いいんすか??
朝も、いいんすか???朝食付きホテルのようなお得感いいんすか?
てっきり夜だけかと思ってたんだけど、お気に召していただけたんすか!!!!
アプリで出会った人とその日のうちに…だなんて、いろんな意見はあるだろう。
しかし、ここ数年仕事一色だった私の中の「女性であること」を凄く肯定してもらった気がして、もう、大満足でーす!!
こうして、おかわり2周目は終わった。
ーー
シャワーを終えて部屋に戻ってきた新幹線は、私のパソコンでYouTubeを開くと洋楽R&Bを流し始めた。
「この曲いいね」
「やろ?じゃぁ次はこれ聴いて」
「あ、この曲も好きー」
「めっちゃいいよな♪今度ライブ行こや」
音楽が好きな新幹線。
ベッドの上で嬉しそうに曲を選んでいる。
楽しいなぁ。
しかし時刻はもう12時を過ぎ。楽しい時間は一瞬である。
「あ、ヤバいよ時間!急いで出ないと!」
「大丈夫、4時からに予定遅らせてもらったからまだ一緒に居れるよ」
トゥクン…!
「こっち来て」
笑顔で腕を広げる。
トゥクン…トゥクン…!
私を引き寄せると軽いキッス。
トゥク トゥク トゥク トゥク トゥク !
く、苦しい。
不整脈?
いや違う、これは…恋!!!
あなたに逢えたそれだけでよかった
世界に光が満ちた。
夢で会えるだけでよかったのに愛されたいと願ってしまった。
脳内にポルノグラフィティのアゲハ蝶が爆音で流れた。もうわたしが作ったんかな?ってくらいドンピシャ。サンキュー岡野さん。
あんなにわきまえてたのに。ヤレるだけでよかったのに。
まるで恋人みたいな時間のせいで、愛されたいと願ってしまったじゃないの…!!
愛されたいと願ってしまったなら、もうそれは恋なのです。
新幹線を好きになってしまった私。この恋の行方はどうなる!?
次回予告!
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