西野カナとBrand New Meな私。

人間関係とは難しいもんで、最近35歳にしてオイオイ泣いた。

相手との関係が終わってからも後味が悪く、
ちょうど連日の雨もあり私の気持ちはどんよりしていた。

そんな私を救ってくれたのはカナやんだった。西野カナって言ったらわかるかな?

会いたくて震える、という衝撃ワードで一躍有名になり日本国民から「震えるわけねぇだろ」の総ツッコミを受けながら爆誕した平成のカリスマ。だよね。


みんなはさ、西野カナの凄さ知ってる?
本当の意味でどれだけ凄いのか知ってる?

かくゆう私も彼女がデビュー当時、私が大学生の頃は冬に寒くて震えてる友達に「西野カナしてるやん」と言うくらいには会いたくて震えるをイジちゃっていたんだけど。

西野カナとは同い年。でも流行っていた「金髪×カンカン帽×ワンピース」のいわゆる“西野カナルック”も、自分とは関係のないとこで巻き起こってるブームでしかなかった。あーギャルっすね、って。


ミヒマルGTとかクリスタルケイみたいな一発屋でしょ?とカテゴライズしていたけど、西野カナは28歳になっても売れ続けていた。

でもやっぱり興味はなくて、どれだけ歌番組に西野カナが出ていようが1度も真剣に聴いたことはないまま。

当時、私はマッチングアプリで出会った高身長イケメンに恋していた。
といっても全く脈なしでもう失恋してたようなもん。わかっちゃいるけど諦めきれない苦しい時期。
後にイチモツの写真を送りつけられ完璧に諦めることができたのだが(詳しくはこちら
それまでは「好き…でも無理…やっぱり好き」の繰り返し。


苦しい時に限って時間が経つのがやけに遅い。


そこで思った。

いっそ苦しさにどっぷり浸かったろかな。超失恋モード発動したろかなって。

失恋にどっぷり浸かるにはどうしたらいいのか、真剣に考えて出た答えがこれ。



「カラオケで西野カナを歌いながら号泣する」

うん、正解ですね。失恋して髪切る、の平成版ですもんねこれ。


すぐにTSUTAYAへ行き1枚のアルバムを借りた。
選んだのは「Secret Collection 〜GREEN〜」

適当に借りたから、カップリング曲とかがメインで有名な曲が全然入ってないアルバムらしい。
ただでさえ刺さってないのにサブ曲とか大丈夫…?と思いながら聴き始めた。


が、1曲目でまんまと射抜かれちゃった。

仕事も手につかないなら
自分らしくいられないならAh-aaa
いっそのこと好きじゃないことにしたい

西野カナ/No.1

わっっかるぅーーー!!!
なにこれーー??
えーーーーーー???
この歌詞私が書いた?Ah-aaa!?!?

彼といると良く思われたくていつもの自分らしさが失われるし、諦めたいけどできないから、いっそ好きじゃないことにしたい…そんな私の気持ちにビタっと寄り添ってくれる歌詞。やばい。

続く2曲目も3曲目も西野カナはビタ寄せしてくる。

1枚のアルバムの中に、恋の始まりのワクワク感。恋の最高潮、すれ違いのモヤモヤ、恋の終わりの苦しみ、失恋の悲しみ、そして前を向いて新しい自分として一歩踏み出す勇気まで、ぜーんぶ入ってる。やばい。


西野カナやばいぞ。

中でも、私にぶっ刺さったのが

「Brand New Me」

今日から新しい素敵な自分だよー!と歌ったポジティブなこの曲。とくに好きなのがこちら

鳴らない電話に oh
振り回されてた
昨日までに goodbye

グッバイ!!
昨日まで彼のことばっかり考えて腐ってた私にグッバイ!
そして新しい私こんにちは!

失恋の傷もそのまま抱えて一歩踏み出す新しい私は前よりも素敵な自分になれてるはず!だよね、カナやん!
もうアルバム1枚聴き終わった頃には、カナやんって呼んじゃってた。


これがカナやんが私の背中を押してくれた1度目だった。
そして今回が2度目。

今回の出来事は人生でワースト3に入るくらいしんどかった。

相手とは1ヶ月わが家に居候させてあげたのをきっかけにとても親しい友達になった。
相手のお母さんに電話で泣きながら感謝された時に、
「子どもが異国で大変なことになったら助けれないし心配だよね。私のお母さんもきっと同じように心配するだろうな…」と自分のお母さんが重なり、勝手に責任感を持っていた。だから私なりにできる限りの親切心と誠意を持って接してきた。

つもりだったのたが、あることをきっかけに関係がギクシャクしてしまった。
数回に分けて5時間くらい話し合ったけど、最終的にはずっと嘘をつかれていて、嘘をついていたことについても「嘘が不誠実だとは思わない」との事らしい。




はい、解散です!解散、解散!
価値観の違いは仕方ないよね。うん。

君は森で、私はタタラ場で暮らそう!

小さい街に住んでるけど、心の中ではもう2〜3山向こうの森で暮らしてることにしよう。全く関係ないところでお互い幸せに生きよう。


終わった事なのでいつまでも考えていても仕方がない。

そう気持ちを切り替えた。

いや、切り替えたかった。

この切り替えが苦手で…。暇さえあれば思い出してモヤモヤ考えてしまう。


気分を変えるために音楽も聴いた。
いつもよりポジティブだったり、力強い歌詞の曲を選んだ。

名曲のシャワーで心を洗浄しよう、ってことでまずは大好きな宇多田ヒカル。

素朴な言葉で描く人間の本質、そこに込めた願いや希望。

うん、レベル高すぎて全然今じゃない。私の抱えてるようなみみっちい悩みなんて歌ってないのですよヒカルパイセンは。レベルが高すぎて自分が情けなくなる。


強い気持ちなったろ!と思って聴いたAwich。

うん、今度は力強すぎて。Awich姉さんが闘ってるものがデカすぎて圧倒されちゃって。こんなしょっぱい悩みにいっぱいいっぱいになちゃってごめんなさいの気持ち。


そんな中Spotifyの平成のヒット曲プレイリストから流れてきたのが…


お久しぶりです、西野カナでBrand New Me

恋愛の終わりを歌った曲なのでシチュエーションこそ違うものの、7年越しにBrand New Meが突き刺さる。

振り回されてた 昨日までに goodbye!

そう、モヤモヤ考えちゃう自分にグッバイ!!!!

今回の事はショックだったけどすごく勉強にもなった。傷ついたけど相手の事も傷つけたかもしれない。もう元には戻らないけどそれも抱えてBrand New Meってことっすよね、カナやん!

35歳の心にもカナやんはビタ寄せしてくる。すごい。


ところで。
カナやんがここまでビタ寄せ曲を作れる理由を、みんなご存知だろうか?

それはちょっと変わった曲の作り方にある。

カナやんは曲を作る時に「企画書制作」から取り掛かる。
テーマやコンセプトを決めてから、登場人物の年齢や性格など人物像を組み立て、アンケート調査までするらしい。
本人も「道を歩いていて歌詞が浮かぶ、みたいな方もいるかもしれないですけど、私にはそういう脳はないんです」と話している。

これにより作者本人のパーソナルな言葉は薄まるが、逆に聞き手の最大公約数に「え?私のこと?」と思わせ共感を産むことができるのかもしれない。

実体験を元に歌ってます系かと思いきや、むちゃくちゃ戦略家のカナやん。


待てよ。
ここまで戦略的だと「会いたくて震える」も怪しい。
まんまとしてやられた気がしてきたぞ。


そもそも「会いたくて◯◯」というフレーズはこれまで散々擦り倒され、数多の名曲で使われてきた。

松田聖子が会いたくて、眠れぬ夜はあなたの温もりを思い出し
GLAYが会いたくて、会えなくて長すぎる夜に光を探して
EXILEも会いたくて、会えなくてくちびる噛みしめて泣いて
夏川りみは会いたくて、君への想い涙そうそう


ここまで多くの曲で使われていると、先人たちがいろんなパターンをやってきたのでオリジナリティを出すのが難しい。
「会いたくて」に続く、ありとあらゆる下の句はもう出尽くした感がある。

もうこれ以上ないやろ…。誰もが諦めたレッドオーシャンにカナやんが打ち出したのが

「会いたくて 震える」だ。


これ、実は天才的なバランス感覚なのでは?

震えるというワードは衝撃的ではあるものの、「震える」は心が震えるともとれるし、会いたくて会いたくて震えちゃってる子はか弱くて可愛らしい、気がする。
震えるくらい会いたい気持ちはギリわかる範囲ではある。まぁ震えないけど。

可愛いらしさとオリジナリティーを両立させるちょうどギリギリのラインが「震える」なのだ。

個性を出したいからといって気を衒って


「会いたくて 食べちゃう」だとどうだ?

めちゃくちゃ元気だ。
会いたくて食べちゃう奴は、会っても会えなくても食べちゃうだろう。
儚さとは真逆の快活さすら覚える。全然ダメだ。


「会いたくて 震える」

これはカナやんが話題になるギリギリワードを戦略的に入れたに違いない。
さすがに震えねぇよ!とイジられることももちろん想定内。もう全部カナやんの手のひらだったのだ。

私が特に天才かよ!と思った曲を紹介しよう。
タイトルそのままに25歳の女性のリアルな心境の変化を歌った曲「25」だ。

社会人になって数年、仕事にも慣れて金銭的にも少し余裕が出てきたよー!
けど結婚する友達もいて、まだ自由でいたいし恋愛したいし、でも一人ぼっちになりたくないし…えーどうするー?

みたいな、内容はこんな感じ。

この曲のすごいところは散々悩みを言っときながら「ランチタイム終わっちゃう」で急に切り上げるリアルさもさることながら、一番は何と言っても最後の1節だ。

どっちつかずで今は悩ましい
欲張りな時間 twenty five
まだまだ楽しい twenty five
そんな感じかな

そんな感じかな、これです!

そんな感じかな、で終わってるのが本当にすごい!

平成のカリスマたるもの、自分の哲学を歌詞に入れ込みそれを持ってファンを唸らせたいはず。

曲の全編にわたり些細なものから大きな悩みまで羅列しながらも、それを解決することなく、カナやんの哲学を提示することもなく「そんな感じかな」でふわっとまとめる。
そうなのよ。25歳で仕事か恋愛かだなんて答え出るはずないし、いらないんだよ答えなんて。

このセンス。天才です。

ちなみに、このパターンでさらに「27」「29」と続く曲がある。年齢に合わせた変化がすごいから是非検索して歌詞だけでも見てほしい。ビタ寄せ炸裂してる。


最後に。
そんな西野カナが今年復活したってさ。お帰りカナやん。

35歳になったカナやん。
もう夜更かしマジで無理じゃない? 黒染めするほどでもない数本の白髪どうしてる?って35歳のリアルを歌った「35」って曲作ってくれるの待ってます。

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