前回までの話
マッチングアプリで出会った186cmのバツイチ(元妻は外国人)と会うことにした。 待ち合わせ場所に現れたのは大好きな俳優、テイラー・キニーそっくりの男! 居酒屋でも家でも紳士的。キニーから告白され付き合うことになったのだが、すぐに豹変して… (キニーが豹変する詳しい様子はこちら)
ワイルドにキスされている。
壁ドンするで、からの壁ドン…通称・宣言ドンで壁際に追いやられ、ワルドにキスされている。
宇多田ヒカル的に言うならば最初のキスはタバコのflavorがしている。
5分前まで、床に座り「体目的だと思われたくないし、今日は帰る」とキリッと言い放ったあれはなんだったのか。
あんなに紳士的だったのに…。
あ、もしかしてこれがギャップ萌えってやつ?
「清楚そうな子が実はエロいってのが一番興奮する」の、男バージョンってこと?
キスはどんどん荒々しくなり…。
これは願ったり叶ったりの展開だし、付き合うことになったのだから、当たり前の営みである。
でもなんか違和感が…。
ベッドに移動すると、キニーのSっ気は全開。
いよいよ獣だ。
そして、おしゃべりだった。
Sっ気のあるおしゃべり…
人はそれを「言葉責め」と呼ぶんだけど。
言葉責め自体はもちろん良い。
でもこいつは言葉責めが過ぎる。
まず、どちらかのテンションが伴っていないときの言葉責めには注意したほうがいい。
特に女性側の気持ちがノっていない時、言葉責めすればするほど冷めてしまう。
勘のいい人はノってるかどうか察してくれるのだが、こいつは「どう?俺って気が利くでしょ!というアピールが強い人」(1話参照)なので、その辺が鈍い。
女ってこんなのが好きなんでしょ!たまらないんでしょ!
と言わんばかりのドヤ顔だ。
女性ってそんなに単純じゃないのだよ。
こいつは「Sな人」ではない。
「どう?俺ってSでしょ!というアピールが強い人」だ。
本来のS(サディスト)の意味は「サービスのS」。
相手の快楽を引き出すことで快感を得るのであって、本物のSは自己満足では完結しない。
その点、キニーは自己満の塊だ。
違和感の正体はこれだ。こいつ、宣言ドンからずっと自分のSっ気に酔っている。
いやー、マジでそろそろSキャラについては免許制度を取り入れて欲しい。
きちんと基準をクリア人だけがSを名乗れるように免許発行した方がいいわ。
それくらい、世の中にはエセSが蔓延している。
ここから、キニーのもう一つの問題が浮上する。
致してるとき、エセ・S・キニーが言った。
「もうこれは俺のおめこやねんから」
俺の…なんて?
おめこって言った?
え、ごめん、おめこって何?
文脈から察するに、あれのことなんだろうけど…
オカメさんしか浮かばない。
…なんなん、笑わす気なん?
しかしキニーはドヤ顔。
どうやら笑わす気は無いらしい。
言葉責めは加速する。
ちょっと嫌な予感がする。
こいつもしや…
キニーはまたドヤ顔で言い放った。
「どこに入れて欲しい?」
あーあ。やっぱり。
こいつも問う人か。
私は、してるときに性器の名称を問われるのが苦手だ。
卑猥な言葉を口にするなんて恥ずかしい…という訳ではない。
自分から言う分には問題ない。(むしろ良い)
しかし、男性側から問われるとなると話は別だ。
この場合、「性器をどう呼ぶのが正解なのか?」で頭がいっぱいになる。
回答者は私だけなので、
誰かにパスすることはできないし、
この手のタイプの男は、スルーしてもどうせ時間差でもう一回問うてくる。
絶対に、何かしらの呼び方をここで提示しなくてはならない。
その圧ったらない。
もうね、松岡修造に胸ぐら掴まれて「本気になれ!」と、迫られてるくらいの圧。
想像してみて。
松岡修造に性器の呼び方を問われる気持ちを。
しんどさ以外に何があるってのよ。
修造「さぁ、君の答えを聞かせてくれ!」
「で、でも…どれも自信なくて」
修造「間違ったっていいんだ!君なりの答えを聞きたいんだ!!!」
「お…おま〇こ、だと思います」
修造「それでいいんだな?君の答えは、おま〇こ、でいいんだな?」
「はい!私はおま〇こでいいと思います!!」
修造「よぉし、おま〇こだな!…良い答えじゃないか!!!」
大した理由もなく導き出した答えを、全力で肯定されるのだ。
恥ずかしい。うん、そういう意味では、すごく恥ずかしい。
問題は修造だけじゃない。
正直、名称がどれもしっくりこないのだ。
例えば、おま〇こ。
こんな時に何を丁寧に”お”をつけて言うてるんやろ…と思ってしまう。
かと言って、ま〇こもま〇こで
「え、仲良くなったらすぐ呼び捨てにするタイプ?」と思われそうだ。
一度、どこに入れて欲しい?と聞かれた時、迷いに迷って、
「…膣?」
と答えたことがあるが、相手のリアクションから察するに間違ったらしい。
難しい。
男性器なんてもっと多様な呼び名がある。
ち◯こ
ち◯ちん
お◯んちんぬ
ち◯ぽ
お◯んぽ
ティンポ
ティンティン
ポコチン
イチモツ
ジュニア
男根
肉棒
マグナム
選び放題すぎる。ビュッフェかよ。
これにビートをのせるだけでラップになるんちゃうか、ってくらいのバリエーションである。
修造の熱も上がる。
「さぁ君はどれを選ぶ?教えてくれ!君なりの答えをぉぉお!!!」
修造がうるさいので、気持ちが一段階エロから遠のいてしまうのだ。
ちなみに、することを、セクる(したことを、セクった)と呼んでいる人もいた。
下品の極みである。
スをつけるのすら端折らないといけないくらい君は営むことに大忙しなのか、と。わんこそばのように次から次へ、なのかと。
性にまつわる名称は、いつも少し私を困惑させる。
話が逸れてしまった。おめこに戻ろう。
今回の問題はおめこである。
なんだろう、このもったりとした響きから漂う関西感とオッサン臭。
調べたところ、
やはり近畿圏特有の呼び方で、最近はあんまり使われていないらしい。
改めて自分が対峙しているのは一回り年上の、言いたくないけど、オッサンなのだなと自認せざるを得ない。
どんどん冷静になっていく私と反比例するように、キニーの言葉責めはヒートアップ。
自分のSっ気に酔いしれていらっしゃる。
ヒートアップするごとに、私への扱いが乱暴になっていく。
暴力的とまではいかないが、乱暴だ。
気分が乗っていたら、私の中のMっ気が疼きノリノリでそれに応えていたかもしれないが、
なんせ修造&おめこペアがそれを阻む。
私をグルンッとひっくり返した時だった。
シーツが破けた。
こんなことある?
シーツが破けるて…こんなの初めてや。
かといって、それが興奮起爆剤になるわけでもなく。
最近シーツ買ったばっかりやのに…と私が落ち込んでいる間に、キニーはお果てになった。
キニーとの相性は良くなかった。
でも、まぁ、初めてなんてこんなものか。
付き合ったからにはキニーの良い所にもっとフォーカスして、少しづつ歩み寄って行くしかない。いろんな意味で。
まずはおめこって言うのはやめてもらおっと…そう思いながら寝た。
―――
次の日、キニーは帰っていった。
色々あったけど、まだ顔以外の良いところを見つけれてないけど、でも彼氏ができた事に変わりはない。
2年ぶりの彼氏だ。
彼氏ができたというだけで、ちょっとウキウキしている。
仕事中なので、2時間おきぐらいでLINEのやり取りをしていた。
が。
キニーのLINEがなんだかおかしい。
よそよそしい。
まるで付き合ってないみたい。
ダサいけど、確認するしかない。
「変な事聞くけどさ、私たちって付き合う事になったんだよね?」
すぐに返事が届く。
「バツイチの40歳やし、ユキ子は一回り以上も歳下で…
こんな若い子と俺なんかが良いんかなって引け目感じてて」
なるほど、それは当初からキニーが気にかけていた部分だ。
「しかも、俺は今人生で一番太ってるから」
なるほどなるほど。だから自信が持てないと。
その気持ちは痛いほど理解できる。
「だからさ」
「俺とユキ子が10キロ痩せたら正式に付き合おう!」
え、私も?
あんただけの問題ちゃうんかい。
なんで10キロダイエットしたご褒美があなたと付き合うことやねん。
破るのはシーツだけにしてくれ。
「じゃぁこの話はなかったことにしよう」と返信して終わった。
遠回しにしっかりフラれてしまった。
情けなくて悲しい、この終わり方はなんだ。
ねぇ神様、私さぁ、一筋縄でサクッと幸せになりたんだけど。
幸せはどこにあるん?
それから私はペアーズをやめた。
これは別にキニーのせいでも新幹線(一人目の変態)のせいでもない。
悲しんでもいないし、恨んでもいない。2人には、あざーっした!くらいの気持ちもある。
ペアーズをやめた理由は、
1年後に半年間の留学(という名の8カ国をまたぐ、ただの旅行)へ行くことに決めたから。
幸せは自分で、世界で見つけることにしたのだ。
それまでの1年間に彼氏が出来てもしょうがない。
今まで使っていたマッチングアプリ・ペアーズは真剣に交際相手を探してる人も多かったので、気軽にしてる人が多くイケメンが多く生息するマッチングアプリの王様「Tinder(ティンダー)」に戦場を移した。
Tinder(ティンダー)を使い、
NYのタワーマンションに住まわせてもらったり、世界ツアー中のバンドボーカルと夜のセッションしたり、ある国の陸軍大佐とデートしたりするのだが、海外編はまた別の機会に。
幸せは自分で見つけるしかないもんね。
次回のマッチングアプリシリーズは
「別人の写真を使う自衛隊員〜それはポンプちゃいまっせ〜」
をお送りします。
コメント
二話続けて読みました。面白すぎます 笑
そして文章素敵すぎます!
他のお話もめちゃくちゃ楽しみです!
クルさん
コメントありがとうございます!
また近々エピソード3を更新します。
海外編まで続きますが、どうぞお付き合いくださいませー!