努力はしないけど、Tinderはがんばる。【NY編②】

マッチングアプリ_海外編

前回までの話

2017年。いろんな経験をしてみたい!と半年の海外留学に出た28歳の私。ニューヨークへ来たものの英語力ゼロじゃぁどうにもならないと痛感。ナンパをきっかけに「下心があれば会話ができるのでは?」と活路を見出し、アメリカでマッチングアプリを始める。
(前回の話はこちら

先に言っておくと、私はこの留学で今の夫と出会うことになる。
それともう一つ。
私は留学中にとっても調子に乗ってしまう。
わかりやすく言えば

男性と遊びまくってしまう。


うん、わかるよ?
遊びまくったとか言っちゃう系の人への嫌悪感、芽生えたよね少し。
わかるわかる。書いてる私も。

令和7年。35歳の今。
私の価値観は当時よりはそれなりにアップデートされていて、
昔の自分、特に夫と出会う前の調子に乗り上げていた頃を振り返るのは非常にきちぃもんがある。
「仕事とギャンブルと男が好きやわ」と公言してたからねこいつ。だいぶきちぃ。

当時だって、留学と謳って海外に来ているのに男遊びばっかりな自分を恥じる気持ちはあった。
でもじゃぁなぜ止めなかったのか。

底辺の英語力だとガイドブックをなぞるような観光しかできない、というのも理由の1つだ。

でも、まぁこれは建前ですわな。
一番の理由を正直に言うと




チヤホヤされるのが楽しかったから!!!

これです。
楽しかったんです、ごめんなさーい!

モテたことがない人生でした。
「告白される」とか、ある日突然、魔法学校への入学が許可されるくらい自分には起こり得ないファンタジーな世界線。

そのくせ、割り切った関係っていうの?そういうのに憧れて遊んでみたりしたけど、
モテないやつが背伸びするから結局まんまと本気になっちゃって大泣き。

ついには友達から「ユキ子って片想いするの好きよね」と言われのないレッテルを貼られたりして。
趣味:片想い、なんて人いないのよ。
モテないだけだよ察してください。

男友達は多かったんですけどね!
でも、ずっと好きだったんだぜ相変わらず綺麗だなぁなんて言ってくれる私の斉藤和義はどこにも居なくて、シンプルに男友達が多いだけでした。


だがしかし。

この留学中は違ったんですよ。

恋愛対象として見てくれる人が格段に増えて、
相手次第…ではなく“私次第”なシチュエーションが増えました。

私だって追いかけられたい。
振り回されるより、振り回したい。
小悪魔ぶってみたい。

モテたい。


留学中はそれが叶ったのです。
マッチングアプリを使うことによって。


え?でもそれって本当のモテではなくね? 
いわゆる「日本でモテない奴が海外で勘違いした」状態じゃね?

と真実に気づいている正気な自分も貞操観念も
ぜーんぶハドソン川にぶん投げて、私は調子に乗りまくりました。

それを踏まえて、どうか嫌わずに優しい心で読み進めてください。
では、本編に戻りましょう。

ーーー

スマホにアプリをダウンロードし、久しぶりに見慣れたアイコンが追加された。
おかえり、ただいま、Tinder。


Tinderといえば、
今ほどマッチングアプリが市民権を得てなかった2017年にですら、既に「Tinderはヤリ目多いらしい」でお馴染みになっていたキング・オブ・チャラアプリ。

私も日本で数ヶ月の間に30人近くの人と会った。
いちもつ写真を送り付けられたり別人が来たりシーツ破られたりした。
ほとんどがロクでもない思い出だけど、それも含めていい経験だった。(ほんとに?)


いい経験、ニューヨークでもしたいっす!
やるからには本気でTinderに向き合う所存です!

目標はニューヨーカーとニューヨークっぽいデートをすること。
あわよくば、な下心もあります!


まずはプロフィール設定だ。

みんなすごくシンプルで日本と大差ない感じ。
私も英語でシンプルに書いた。

職業欄_Vice president
自己紹介_Japanese/Calligrapher

Vice presidentは副社長という意味。(小さい会社ながらも当時は放送作家事務所の副社長だったので)

そして自己紹介には【日本人/書道家】と書いた。

え?書道家だったの?って?

はい、そうなんです。
私、書道家なんです。




書道家は概念なので。

医者や弁護士になるには資格が必須だけど、
冒険家も芸術家も名乗るのに資格はいらない。

◯◯家というのは名乗ってしまったもん勝ちみたいなとこがある。
もちろん講師になるには検定試験もあるけど、この場合の書道家は概念。概念的書道家。

大好きな映画「天使にラブソングを2」でも、デロリスが本を引用して
「朝起きて、物語を書くことしか考えられないなら、あなたはすでに作家だ」と言っていた。

だとしたら私にも書道家を名乗る資格がある。
だって書道しか考えられないんだから。

言葉の壁を越えてくれるモノがよかった。ダンスとかアートとか音楽とか。
しかし、踊れんし描けんし楽器は弾けん。

でも書道ならどうだ?

マジの書道家に比べたらそりゃ茶カスみたいな物しか書けないけど、
外国人相手なら筆で漢字書いてるだけでそれっぽく見えそう。(だって私はヘブライ語で書かれた文字の上手い/下手はよくわからん)

「利き手とは逆の手で書くと、焼き鳥屋のメニューみたいな文字が書ける」という裏ワザも知っている。

書道ならどうにか誤魔化せそうだ。

それに「何かに使えるかも」と持ってきた筆ペンと小さいスケッチブックがある。
誰かに会えたとしてもどうせ会話が続かないだろうから、そんな時は筆ペンを使えば少しは間を持たせそうだ。

もうこれっきゃないっしょ!
って事でね、消去法で書道家やらせてもらいます。


早速、練習がてら1枚したためてみよう。

ネットでお手本を見ながらそれっぽく。
で、できたのがこちら。

作品名「嘘」

ちょっと…え?
だいぶいい感じちゃう?あたしってば憑依型?

この「嘘」はプロフィールの2枚目に載せた。

Tinderではほとんどの人が瞬時に“アリナシ”を判断する。
よっぽどタイプの人じゃない限り、1~2枚の写真とプロフィールを流し見するだけ。
1秒も使わない。勝負は一瞬。

書道の写真を載せることで「なんだコレ?…あぁCalligrapherなの?クールじゃん!」となるはず。なってくれ。

それにこの「嘘」は保険でもある。

実際に会って書道家の実績がないことがバレでも、
だから2枚目に「嘘」って書いてるんだよ、と言い訳ができる。
この言い訳も、HAHAHA! ナイスアメリカンジョーク!ってなるかもしれない。なってくれ。

1枚目に私の奇跡の1枚(をギリギリ本人とわかる程度に丁寧に加工したもの)を載せて、プロフィールが完成した。

とりあえず適当に登録してみました~、みたいなシンプルな仕上がりだけど
少しでもヒット率を上げるために考え抜いたプロフィール。

我ながら小賢しい。

留学前にちゃんと英語を勉強してくるといった真っ当な努力はせず
参考書は1冊も持ってきてないくせに、筆ペンは2本も持ってくる浅ましさ。
その場しのぎで書道家と名乗っちゃったりして。もうただの詐欺師。
昔から、努力せずに小手先でどうにかしようとする癖があるよね私は…。


ま、いっか☆

何はともあれ、いよいよTinderスタート!


すぐに何人かとマッチングした。
メッセージをくれた人の中から、良さげな人とやりとりをしてみる。

もちろん英語力は無いので翻訳サイトを使って
Are you Japanese?だのDo you live here? だのに返事をしていく。

コピペ→翻訳→日本語で返信を作って翻訳→コピペ→送信

めっっんどくせぇ。
ただでさえこの手のメッセージはめんどくさいのに、翻訳サイトを経由するのでめちゃくちゃめんどくさい。
手っ取り早く会ってしまいたい。

すると、ある男性から
「何してんの?」「飲みに行かない?」と立て続けに2通のメッセージがきた。

雑談を挟まずこの感じ。

彼の名前はフランク。
Tシャツ姿+大きなヘッドフォンを付けたラフな自撮りと、ビーチで撮った水着姿の自撮り。

…こいつ自撮りしかないやんけ。
いや、でもアメリカだと普通なのか?これが自己主張ってやつか?

写真を見る限り筋肉質なイケメンだ。
うん、ありありあり、ありです!お願いします!


「今日は無理だけど、明日ならいいよ」
「いいね、どこに住んでるの?」

これこれ。

サクッと会えるこの手軽さがいいよねTinderは。


でもさ、サクっと会って大丈夫なんかな?

どこが危ない地域なのかよくわかってないし、
助けを求める時の英語も咄嗟に出てこない。
ニューヨークでの私の自己防衛力はだいぶ低い。だぶんスライム並みに雑魚い。

日本の時みたいに気軽に会うのは危険な気がする。


そこで私はルールを1つ決めた。

自分の知っている場所で会うこと。

・知らない駅で待ち合わせはしない
・マンハッタンの寮から歩いていける範囲内。
(後を付けられたとしても、寮は24時間セキュリティ付きのホテル内にあるから安全)
・地下のお店には行かない

対策ってほどでもないけど、考えなしに行くよりはマシなはず。
スライムに心ばかりの防具を装備しよう。

私が寮の近くを指定すると、
フランクからすぐに「じゃぁ、明日の7時にここで」とお店のURLが送られてきた。

大通り沿いではないけど路面店だ。ここなら大丈夫そう。



翌日。

授業後に寮に戻り、深い意味は無いけどシャワーを浴びた。

次はメイクだ。
いつもより伸ばしたアイラインにパッキリした色のリップ。眉毛もしっかり描いた。

濃い。
デーモン閣下とwith B を従えていた頃のブルゾンちえみと同じ流派の顔をしている。

この顔で街に繰り出したとて、
車のサイドミラーに映った自分を見て、やっぱさすがに濃すぎるか…とすれ違う人にバレないようにリップと眉毛をこすり落とす未来しかない。

…日本だったらね。

でもここはニューヨーク。
凹凸くっきりグランドキャニオンを携えた顔面が行き交うこの街にいると
私の顔はのっぺり平らで、のどかな田園風景すら感じさせる。

薄い。

つけまつ毛も足しときましょか!
仕上げに前髪を中村アンくらいバサっとさせて、
はい、あじあんびゅーてぇーの完成です!



小さなカバンに筆ペンとスケッチブックを忍ばせ、いざ待ち合わせ場所に向かう。

道すがら、プロフィールを見返すと
「From Paris. 
Looking for fun…and adventure」 とある。

フロム パリってことはフランス人なのかな?

前回インド系アメリカ人と飲みに行った時は、ずっと相手のペースだった。
最初をミスったせいで、その後の自分のキャラを決定づけてしまったのが敗因だ。

ちゃんと挨拶ができず、オドオドしている間に相手に主導権を握られ、
気づくと自らシャイでおとなしいキャラにすっぽり収まっちまった。情けねぇ。

英語が話せないなりにも、第一声に明るい声で挨拶するのは大事だ。
人見知りなので、自分に「社交的で明るい私」スイッチを入れるという意図もある。

ボンジュールだな。
第一声は、元気な声でボンジュールと言おう。
余裕があればクロワッサ~ンも付け加えよう。
こんにちは、おにぎり〜!と言われるようなもん。笑うだろ流石に。
最初に相手を笑わせたらこっちのもんだ。
英語が話せなくても、ずっと主導権を握られっぱなしって事はないはず。
乾杯はルネッサーンス!をかましてやろう。明治維新〜!つって乾杯してるようなもんよ、どや、わけわからんやろ。

なんて考えていると、もう店の前まで来ていた。

着いてしまった。

フランクはもう来てるだろうか…
ドアのガラス部分から店内をぬぅっと覗き見る。


「ユキ?」

急に後ろから名前を呼ばれ、振り返るとイケメンがいた。


「ユキだよね?初めまして、フランクだよ。」

「ほらTinderでメッセージした…」

「ってか外で何してるの?笑」

「まぁ中に入ろうか」

「はは、大丈夫?」


なんかすごく畳み掛けられている。
ボンジュールどころか一言も発する隙間がない。
正直、ぬぅしてたのを見られた恥ずかしさしか頭にない。

たった数秒の間に

恥ずかしがり屋スイッチが入り、

人見知りスイッチが入り、

シャイで無口なスイッチが入り、

いっそ控えめでおとなしい女性路線でいこかなスイッチが入り

その方がミステリアスでモテそうちゃうかスイッチが入った。


スイッチが入りすぎた。

離陸前の機長くらいスイッチ入れてくやんか。
そのくせ社交的で明るいスイッチはオフのままやんか。

なんかあれだな、今日も負けそう。

その直感は当たり、
結局この日、私は終始フランクのペースに振り回されることになる…。


つづく。

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